3話予告のちゅー妄想。
ばっちり、ティエリアは見た!だと思ってる。
何より弄ぶためのちゅーだと信じてる。
だいぶ慣れてきた艦内を、鼻歌混じりに悠々と歩く。
さすが宇宙艦といった設備や施設が多々あり、地上での行動が主だった身としてはなかなか面白い。
(って、面白がってる場合じゃあない……か)
隈なく艦内を歩き回り、構造を頭に叩き込む。
いくつもの階層に分かれ、複雑に入り組んだ全体図を把握するのは骨が折れる。
だが、正確な情報を求められている以上、手を抜くこともできない。
それ以上に自分が許さない。
にしても信頼しすぎじゃないのか、と思う。
艦を自由に歩き回れることはありがたいが、元カタロン構成員だとわかっていての野放しは些か問題があるだろう。
(兄さんさまさまってか)
と先ほど接触したピンクの髪をした少女を思い出す。
ここのクルーは、機体を見て感傷に浸るのがお好きらしい。
ケルディムを見上げていたところに何気ない振りで声を掛けた。
「気になるのかい、この機体が」
勢いよくこちらを振り向き、途端気まずい顔をする。
「……すいません、ぼーっとしていて……」
ライルに落胆したというよりも、自分を諌めるような表情をした少女に笑みが零れる。
利用できる。
初めて対面した時の動揺、そして今のリアクション。
まだこいつはニールを忘れられずにいる。好意を抱いたまま。
「そんなに似てるかな、俺と兄さんは」
「いえ、別に……」
以前、別人に投げかけた言葉を再びかける。
少女はほんの一瞬苦い顔をしたが、すぐに毅然とした表情に戻した。
そのかわいらしい強さを好ましく思う。
そして、もっと追い詰め、壊してやりたくなった。
「ここにいる時の兄さんはどんな感じだった?」
結局会えないままだったから――と寂しさを交じらせたかのような瞳で問う。
予想通り、同じく痛みを堪えたような顔で少女は呟く。
「頼りになる……優しい人、でした」
「それで好きだった、と」
かわいいね、と笑顔で囁き、驚愕する少女に口付けた。
結構かわいい顔をしていたし、落とし甲斐がありそうだと思う。
未だに兄を忘れられない少女。
同じ顔の人間が現れて動揺している様は、見ていてとても滑稽だった。
それでも4年もの間、一人を思い続けている気力はすごいものだと素直に感じる。
(かなりめんどくさそうだけどな)
退屈しなきゃどうでもいいか――とドックが見渡せるパイロット控え室に入る。
次の連絡まで、まだ時間がある。艦内図構築はひとまず休憩にする。
ぼんやりと機体でも眺めるつもりで来たが、先客がいた。
「よ、まさか誰かいるとは思わなかったな」
ちらりと一瞥をくれると、ティエリアは眉を顰めた。
「……君は何をしている」
「……なんのことだ?」
十分に気を配りながら、艦内探索以上の動きに見せていないつもりだった。
もしやしくじったかと身構える。
ティエリアが勢いよく開きかけた口を閉じ、一つ溜息を吐いた。
「ドックでのフェルト・グレイスへの行為だ」
「……あぁ」
内偵活動を見咎められたわけではなかったことに気が緩み、笑い含みの高い声が出てしまう。
それを軽い調子と受け取ったのだろう、ティエリアは顔を歪めた。
「ソレスタル・ビーイングの仲間にちょっかいをかけるのはやめてもらいたい」
「失礼なこと言うなよ。ただ物欲しそうな顔してたからシてやっただけだってーの」
「いい加減にしろ。……彼女はロックオンに惹かれていた。その気持ちを踏みにじるな」
苦さを含んだ表情で言い放つ姿に、ある疑念が浮かぶ。
ほぼ確信に近い、疑念が。
「おいおい、今は俺がロックオンだろ。なら問題ないじゃないか」
「ふざけるな! お前はロックオンじゃない。ロックオンだなどと言うな」
弾かれたように捲くし立て、否定するティエリアに、つい先ほど感じた感覚を思い出す。
あぁ、こいつもかといっそ愉快なほどだった。
「へぇ……。そういえばお前もロックオンに大層入れ込んでたそうだな」
ただの引っかけに過ぎない、揺さぶるだけの言葉だった。
それなのに一気に表情を失い、いっそ泣いてしまいそうに揺れる瞳が、愉快な気分を吹き飛ばす。
イライラしてたまらない。
こんな顔をするこいつも、こんな顔をさせるあいつも。
苛立ちを紛らわせるために、甘く優しい声で言い聞かせるよう耳元で囁く。
「俺が、本物のロックオン・ストラトスだ」
うちのティエは基本的に怒ってばっかな気がします。
……おっかしーな。
もっと余裕のあるところも書きたい。
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