オフがこんな性格だったらいい希望。
これくらい最低な感じだったら最高。
「そんなに気になるか?この機体」
よほど熱心に見上げていたのだろう。コックピットから顔を覗かせたロックオン――と名乗った男――は困ったように笑った。
「……すまない」
不意に頭上から降ってきた声に、思わず動揺する。
彼がソレスタル・ビーイングに合流して以来、極力顔を合わせることのないようしてきたのに不覚を取ってしまった。
違う、彼ではない。彼などではないのだと必死に言い聞かせる。
「いいや、構わないさ。これから共に戦場を駆る機体だからな、こいつのことも知っておいてもらいたい」
いつの間にかドックへと降りてきていたオフがティエリアの隣に並ぶ。ゆるくウェーブのかかった栗色の髪が、ふわりと舞った。
作業効率を優先させるために、地上より低い重力に設定されているドックならではの光景に、再び過去の幻影が重なる。
整備後の機体に向き直り、何かを祈るように眼を閉じる彼は何を思っていたのか。
もう問うことのない疑問に答えてくれる人はいない。
「ティエリア・アーデ」
フルネームを確かめるように呟き、鋭い翠色の瞳がティエリアを射抜く。かと思えばすぐに和らげ、まじまじと見つめてくる。
「やっとまともに顔を見た気がするぜ」
からかう様な口調で、逃げ回っていたことを揶揄される。招集がかかったときなどでしか男の前に立つことはなかった。
どうと言われても構わない。ただこの男の前に自分として立つことが怖かった。
「確かにみんなの言う通りだな、美人で……――屈服させたくなる」
「……な、に?」
突如声のトーンが落ち、ティエリアへと距離を詰める。
この男が何を言ったのか、理解ができない。無意識のままに後ずさるがすぐに機体の脚部が行く手を阻む。
「避けてたんだろう?俺のこと。あいつを思い出しちまうから」
一瞬こわばった顔を見て、笑みを深める。
「お前、あいつとヤったんだろ?」
その声が何を言ったのか、理解できなかった。
ただ、目の前の男が――彼とよく似た顔が、確信を深めたような顔をした。
「俺たちは双子だからな、好みがわかるんだよ」
下卑た笑みを浮かべ、見分するような目つきでティエリアを舐めつける。
「あぁ、あいつが好きそうなやつだなってな。わかっちまうんだよ。
強引に突っ込んで泣かせてやりたい。とことん焦らして喘がせて無茶苦茶にしてやりたいってな」
「黙れ下賤!」
顔を紅潮させ掴みかからん勢いで拳を震わせる。
こいつは今なんと言ったのか。
「……貴様ごときがロックオンを汚すな……っ!」
「だから言ってるだろ?あいつが考えてることはわかっちまうって。
で?実際はどうだったんだ、優しくしてもらえたか?
あぁこんなイイ顔してたら理性吹っ飛んじまうな」
くくっ、と笑いながら嫌悪に歪むティエリアの頬に手を伸ばす。
触れられる直前に激しくはたき落とし、蔑みと怒りで睨み付ける。
「二度と私の前に現れるな……っ」
言い終えるか否や、踵を返す。
堪え切れないというような大きな笑い声が、いつまでも耳に不快に残った。
(違う、あいつは……)
その顔とその声だけが、身体の奥深くを絶えず掻き乱していた。
別個に書いてたのをくっつけたら、激しくくっつかない感じに……。
おおおおお。
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